配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の概要


 我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
 配偶者からの暴力は、犯罪となる行為であるにもかかわらず、被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、個人の尊厳及び男女平等の実現の妨げとなっている。
 このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図るためには、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることが必要であり、このことは、国際社会における取組にも沿うものである。
 配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する。



1 定義[第1条]

(1)  「配偶者からの暴力」とは、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)からの身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。
(2)  「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者(配偶者からの暴力を受けた後婚姻を解消した者であって、当該配偶者であった者から引き続き生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものを含む。)をいう。



2 国及び地方公共団体の責務[第2条]

 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護する責務を有する。


3 配偶者暴力相談支援センター等

(1)  都道府県は、婦人相談所その他の適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センター(以下「支援センター」という。)としての機能を果たすようにするものとする。[第3条第1項]
(2)  支援センターでは、配偶者からの暴力の防止及び被害者(被害者に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けた者を含む。)の保護のため、
<1> 相談及び相談機関の紹介
<2> 医学的又は心理的な指導その他の必要な指導
<3> 被害者及びその同伴家族の一時保護
<4> 自立して生活することを促進するための情報の提供その他の援助
<5> 保護命令制度の利用についての情報の提供その他の援助
<6> 被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報の提供その他の援助を行うものとする。[第3条第2項]
(3)  (2)の<3>の一時保護は、婦人相談所が自ら行い、又は一定の基準を満たす者に委託して行うものとする。[第3条第3項]
(4)  婦人相談員は、被害者の相談に応じ、必要な指導を行うことができる。[第4条]
(5)  都道府県は婦人保護施設において被害者の保護を行うことができる。[第5条]


4 被害者の保護

(1)  配偶者からの暴力の発見者による通報等[第6条]
<1> 配偶者からの暴力を受けている者を発見した者は、支援センター又は警察官に通報するよう努めなければならない。医師等は、配偶者からの暴力による傷病者を発見した場合は、支援センター又は警察に通報することができ、この場合、その者の意思を尊重するよう努めるようにする。
<2> 医師等は、配偶者からの暴力による傷病者に対し、支援センター等の利用について、その有する情報を提供するよう努めなければならない。
(2)  支援センターによる保護[第7条]
 支援センターは、通報又は相談を受けた場合には、必要に応じ、被害者に対し、支援センターの業務の内容について説明及び助言を行い、必要な保護を受けることを勧奨するものとする。
(3)  警察官による被害の防止[第8条]
 警察官は、通報等より配偶者からの暴力が行われていると認めるときは、法令の定めるところにより、暴力の制止等配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(4)  関係機関の連携協力[第9条]
 支援センター、都道府県警察、福祉事務所等の関係機関は適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。


5 保護命令

(1)  被害者が更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、
<1> 当該配偶者に対し、6月間の被害者への接近禁止
<2> 2週間の住居からの退去(被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。)
を命ずるものとする。[第10条]
(2)  (1)の申立ては、暴力を受けた状況等一定の事項を記載した申立書を、相手方又は被害者の住所等を管轄する地方裁判所に提出して行うものとする。[第11条、第12条第1項]
(3)  裁判所は、申立書に、被害者が支援センターの職員又は警察の職員に保護等を求めた事実の記載があるときは、当該機関に対し、保護等を求めた際の状況及び当該機関が執った措置の内容を記載した書面の提出を求め、必要があれば説明を求めることができる。[第14条第2項、第3項]
(4)  (3)に掲げる記載がないときは、申立書に、公証人の面前で宣誓の上で認証を受けた配偶者からの暴力に関して作成された供述書を添付しなければならない。[第12条第2項]
(5)  裁判所は、保護命令事件については、速やかに裁判をするものとする。[第13条]
(6)  保護命令は、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、発することができない。その期日を経ることにより、申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。[第14条第2項]
(7)  接近禁止命令は、被害者の申立て又は加害者の申立て(命令の効力が生じた日から3か月を経過した場合において、被害者に異議がないときに限る。)により、取り消すことができるものとする。[第17条]
(8)  保護命令が発せられた後に、新たに配偶者からの暴力を受けていない場合であっても、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、接近禁止命令に限り、再度の申立てをすることができるものとする。[第18条]



6 雑則

(1)  職務関係者は被害者の人権を尊重し、その安全の確保等に十分配慮するとともに、国及び地方公共団体は、職務関係者に対し必要な研修及び啓発を行うものとする。[第23条]
(2)  国及び地方公共団体は、国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。[第24条]
(3)  国及び地方公共団体は、加害者の更生のための指導の方法等に関する調査研究の推進等に努めるものとする。[第25条]
(4)  国及び地方公共団体は、民間の団体に対し、必要な援助を行うよう努めるものとする。[第26条]
(5)  一時保護等に要する費用については都道府県が負担し、その一部を国が負担又は補助するものとする。[第26条、第27条]

7 罰則

(1)  保護命令に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。[第29条]
(2)  虚偽の記載のある申立書により保護命令の申立てをした者は、10万円以下の過料に処する。[第30条]



8 附則

(1)  この法律は、公布の日から起算して6月を経過した日から施行する。ただし、支援センター等に係る部分については平成14年4月1日から施行する。[附則第1条]
(2)  施行後3年を目途に法律の規定に検討を加え、必要な措置を講じる。[附則第3条]


注意:本記載事項は、内閣府共同参画局公開情報よりの転載事項です。H,15.9.1
http://www.gender.go.jp/
なお、平成15年度中に法改正があります。